解答に美しさが求められる受験科目は何でしょうか。
私は、1番が数学で、2番が英語だと思います。
数学の世界には、『エレガントな解法』と言う決まり文句があります。
設問の意図を的確にとらえ、最も効率の良い方法で答えにたどり着くことのできる解法に使われる言葉です。
特に入試レベルの数学には、限られた時間内に正確な答えを導き出すことを要求されるので、エレガントな解法は強力な武器になります。
英語に関しても、『美しい翻訳』というのがあります。
文字通り、英文の『行間を読ん』で、淀みないすっきりとした日本語に訳された文章に使われる言葉です。
特に入試レベルの長文読解では、行間に隠された文意を的確に理解しないと解答できません。
さて、今回は数学にスポットを当ててみましょう。
数学と算数の最も象徴的な違いは何でしょうか。
数学の問題には、たいていエレガントな解法というものが用意されています。
しかし、算数の問題にはエレガントな解法が存在しないことが多いのです。
算数の問題には、面倒な作業を積み重ねないと前に進まないものがあります。
無理矢理数学的に解こうとしても、解答にたどり着けないのです。
日本ではじめてフィールズ賞を受賞した小平邦彦氏が、ある年の開成中学の入試問題を解こうとしたところ、試験時間以内に解き終えることができなかったそうです。フィールズ賞というのは、数学の世界で言うノーベル賞のようなものです。それでも開成中学の入試問題が解けなかった。
実は、問題が難しいかったと言うよりも、算数には数学的手法がうまく使えない問題というのが存在するということなのです。
この話のポイントについて、勘のいい人は気が付いたかもしれませんね。
そうです、数学とは先人の功績によって確立されてきた学問体系です。
そこには、先人によって編み出された『エレガントな解法』が存在します。
逆に、本当に数学の未知の領域を探索している最先端の研究者たちには、問題をすらすら解く方法というのはありません。歴史的な偉大な発見や発明は、気が遠くなるほど地道な作業の積み重ねで生まれます。発明王エジソンは生涯に多くの実験を行ったと言われています。
彼は、「実験に失敗というものはない。あるのは、この方法が有効でないことを発見したということである。」と語っています。
算数的なアプローチと数学的なアプローチ
実は、本当に数学が出来る生徒というのは、問題に対する2つのアプローチを身につけています。
算数的なアプローチと数学的なアプローチです。
1.算数的なアプローチ
解答への糸口を延々を書き出すことによって解こうするアプローチ。
泥臭いですが、確実に解答にたどり着く方法です。
2.数学的なアプローチ
適応できる数学的な解法を瞬時に選択し、解答までの最短コースを探るアプローチ。
エレガントですが、いつでも使えるとは限りません。
当たり前のように聞こえるでしょうが、算数のできなかった生徒に対しては、小学校時代の算数の復習を省略して数学を教えても効果が上がらないことが良くあります。
それは、九九が出来ないとか、分数の割り算が出来ないとかではなくて、『算数力』とも言うべきセンスが養われていないことが大きな問題です。
中学生の皆さんに、今さら算数の問題を解けと言っても仕方のないことですが、一つ良い方法があります。
中学校で習う数学の問題を、方程式や公式を使わずに解いてみてください。
そうすることで、解法の本質や、公式の本当の価値に気が付くことが出来るでしょう。
実際、高校入試の問題でも、算数的なアプローチでないと解けない問題が出題されます。
特に、トップクラスの高校では、数学的なアプローチと算数的なアプローチを上手に組み合わせないと時間内に解答できない問題が出題されます。
それには、日ごろからパズル問題などで『柔らか頭』を養っておくことも必要です。
『柔軟な発想力』こそが数学の奥義です。
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